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HOMEDOTFATERのささやかな日々

DOTFATHERの腎臓

・・・そう言えば、昔『トーマの心臓』という漫画があったな。

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序章

「ああ、あなたの腎臓はもうダメですね。」
とダンナが医者から宣言されたのは・・・もう2年以上前のことだった。

ダンナには腎臓が一つしかない。
生まれつきではなく、小学生の頃病気で一つ切り取っているのだ。
「おかげで僕の人生は暗かった」、と本人は言っているのだが・・・私は独身時代に遊び呆けていたダンナの姿を知っている。
あれのどこが暗いんじゃ!

そのたった一つの腎臓がダメになるとどうなるか?
・・・死ぬ!
う~ん、それは困るぞ。
私は腎臓は二つ持っているが、ダンナは一人しかいない。
こうなったら腎臓移植しかあるまい。

私のを一つあげるという手はあるのだが、私とダンナは他人である。
血は全く繋がっていない。
どっかに健康な腎臓はないかな・・・あった。
健康そのものの弟が1人いるではないか!
「腎臓おくれ」
「いいよぉ~」
という訳で話はついていたのだが、事はそう簡単ではなかった。

以下は腎臓病(その他諸々の病)と闘うダンナと家族の日々の暮らしの記録である。
読んだだけでくら~い気持ちになってしまうかもしれないので、明るく楽しいサイトをお望みの方からの読後の文句は受け付けません。
尚、一部「日記」と重複していることを最初にお断りしておく。

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1.再び「腎臓もうダメ」宣言

あれから2年・・・去年の11月再び「あなたの腎臓はもうダメですね」宣言をされてしまった。
「じゃ、移殖してください」
「あ、でもまだ24%機能しているんですよね。
20%以下になるまで移殖リストに登録できないんです。
で、そうなると色々な検査に保険が効かない。
だから20%以下になるまで待ちましょうね。」
・・・なんだかなぁ。

そして2001年1月10日、再び検査を行なったダンナの腎臓は、なんと14%しか機能していなかった。
おっ、一気に14%!なんて感心している場合ではない。
「ああ、これは危ない。
これから移殖の準備をしていても間に合いませんね。
すぐに人工透析を始めましょう。」

もしかして、これは医者と病院の陰謀ではないのだろうか?
こっちは2年前からドナーを探しているのである。
一応OKも取ってあるのだ。
それなのに保険うんぬんで待たされたあげく「もう間に合わない」はないだろう!
ダンナは「腎臓移植とはどういうものか?」というお勉強会なんぞにも出席して、少しずつ心の準備を始めていたのである。
しかも、人工透析だけで一生を過ごせるのではない。
同時に移植の準備も開始するのである。
・・・なんだかなぁ。

そして最後に医者は言った・・・
「じゃ、6週間後にもう一度来て下さい。」

・・・おいおい、6週間の間に死んだらどうするんだ!

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2.24時間尿検査

腎臓の機能が14%になった時、「ああ、これは危ない!」と言ったくせに、往生際の悪い医者は
「一時的にこんなふうになることもあるんですよね。
もう一回24時間尿検査をやってみましょう。」
と言った。

もう何回もやっている。
休みの日に24時間尿を溜めるだけのことである。
メンドウではあろうが、痛いわけじゃあるまい。
なのにダンナは毎回文句を言う・・・何故だろう?

ポリ容器というのだろうか、けっこう大きなヤツに24時間分の尿を取っておいて病院に持っていく。
使用中のポリ容器は冷蔵庫に入れておかなければならない。
南カリフォルニアは冬とはいえ寒くはならない。
が、尿って腐るの?

密封容器であるから汚いというわけではないのだが、なんとなくキッチンの冷蔵庫には入れて欲しくない。
で、ガレージに置いてある飲み物専用の冷蔵庫に入れることにしてもらった。
ガレージにあると病院に持って行く時にも便利ではないか!
24時間、尿を溜めたダンナは検査のために病院にでかけた。
家を出てから20分ほどして、電話があった。
「今、暇?」
「ううん、あと4分(細かい!)ででかける。」
「あのね、ちょっと病院に寄ってくれない?」
「どうしたの?なんか悪い知らせ。」
「うん・・・」
「はっきり言いなさい!」
「うん・・・おしっこ、持ってくるの忘れた。・・・持ってきてくれる?」
一体何しに病院い行ったんじゃ!

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3.これを読めば治ります

ダンナの腎臓の噂は風に乗ってどんどん広がっていく・・・って広げているは私かい?
人に言っても始まらないのだけれど、隠していると誤報が広まったりするので去年の暮れに一般公開した。
とは言っても、知人・友人の間だけである。
新聞に載せたわけではない。
すると色々な宗教団体から励ましのお言葉が届くようになった。
(勧誘ですな)
とある宗教を熱心に信仰しているダンナの両親の友人からありがた~い本が2冊届いた。
(とある宗教を熱心に信仰しているのはダンナの両親ではなく、両親の友人・・・この場合、点はどこに打つのかな?)
届けてくれたのはダンナの両親である。
中にダンナの両親を挟むと、用件が伝言ゲーム化してしまうのはいつものことなので、彼(本を貸してくれた人)の意図が正確に伝わったのかどうかはわからないのだが・・・
「この毎日読んでるとDOTFATHERの腎臓が治るんだって。」
「え?でもこれ日本語ですよ。DOTFATHERは日本語読めませんよ。」
「DOTMOTHERが読めば治るんだって。」
「え?本人じゃなくても良いの?」
「良いんだって」
「おおお!これって全部読み仮名が振ってあるじゃないですか!
息子よ、君が読みなさい!」
しかし・・・毎日読んでるだけでダンナの腎臓が治るのである。
こんなありがたいことがあるだろうか!
素晴らしいですね。
これは読まねばなるまい。

読まねばなるまい・・・と思いつつも月日の経つのは早いものである。
一冊も読み終わらない内に、今度はダンボール一杯の本が郵送されてきた。
うううぅ、これは大変だ。
・・・しかし、ダンナの両親が読んだ方が効き目があるのではないだろうか?
なんとな~くだけとそう思った。

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4.やっとのことで透析開始・・・準備
やっと人工透析のためのチューブを腹に埋め込む手術の日が2月15日に決まった。
主治医、腎臓の専門医、透析専門の医者と病院、臓器移植専門の医者と病院、保険会社、これが全部連絡を取り合って治療の日程を組んでいくのだが、さすがはアメリカである・・・全然連絡を取り合っていない!
こういうのを『びゅ~ろくらてぃっく・でぃれい』というのであろう。
そういうことをしなければならないということは(ここまで平仮名が並ぶと読みにくいな)以前からわかっていた。
たかが30分程度で終わる手術である。
入院も無し(ただし1週間は自宅療養)。
全身麻酔だってちゃんとしてもらえるのだ。
それなのにダンナは動揺気味である。
「ああ、僕はついにボーグ(あのスタートレックのボーグね)になってしまうか・・・ボーグになっても結婚しててくれる?」
あのなぁ・・・本当にダンナがボーグになってしまったら、私はみんなに自慢するぞ!

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5.透析用チューブ埋め込み手術
ダンナのお腹に透析用のチューブを埋め込む手術の日だった。
午前10時半に病院へ連れて行った。
何も口にしてないせいか、緊張しているせいか、とても気分が悪そうだった。
車の中でも病院に着いても「うぅ~うぅ~」と唸っていた。
手続きを済ませて、看護婦さんに渡して(ダンナを)家に帰ってきた。
学校が休みなので家にいた愚息が「とうだった?」と聞くので、「ぶぅぶぅ言ってたから病院に置いて来た。」と返事をした。
愚息が横を向いてぼそっと一言
「こういう女とは結婚したくないよな」
あのなぁ、私は父ちゃんが病院にいる間に寝室の掃除とシーツの洗濯をしなきゃならんのだ!
今日から1週間、ベットで過ごすんだから。
掃除・洗濯は前もってやるという訳にはいかんだろうが!
しかも、看護婦さんや医者がうようよいる場所で、私がいたってしょうがないじゃないか!
それに、そういうセリフ、父親が病院に行くのにも気づかずにぐ~ぐ~寝てた君に言われたくない。
しかし、ま、こういう女とは結婚しない方が良いというのは正解ではある。
手術は1時半から30ほどかかると聞いていた。
退院(入院しているわけでもないのに退院というのも変だが)できる時間になったら電話をくれるということになっていた。
が、6時まで待っても電話がかかって来ない。
う~ん、これはおかしい、と思って病院に電話をしてみた。
・・・通じない。
電話が通じないのではない。
話が通じないのだ。
う~ん、私の英語のせいだろうか?
相手が言っていることはわかるのだが、ダンナがいるセクションへ繋いでもらえないのだ。
10回以上色んなところをたらい回しにされた挙句・・・頭に来てこっちから切ってしまった
で、義妹に聞いてもらうことにした。
一発で通じた。
やはり私の英語力の問題であったのだろう・・・悲しい
で、7時半には退院できる、ということだったので迎えに行った。
予想通り、病院を出たのは8時半を過ぎていた。
そんなもんだ。
さて、麻酔が切れたダンナは痛がる。
腹を切ったのだから痛くて当然である。
「いた~い!いた~い」と繰り返す。
しかし、こういう時だけ何故日本語なんだ?
痛み止めの処方箋は貰ってあるので、薬を買って帰らなければならない。
で、いつもの薬局へ行ったのだが・・・8時閉店だった。
仕方ないので、一度も使ったことはないが家の近所にある薬局へ行ってみた。
時間は8時55分。
処方箋を持ってはいると、「明日の朝取りに来て下さい」と言われた。
「ダンナが今車の中でう~う~唸っている。そんなこと言わないですぐくれ!」と無理やり頼んで売ってもらった。
そういうのって当然だと思う。
しかし、近所に24時間営業の薬局がないというのは問題である。
(あるけど私が知らないだけかな?)

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6.He is fine.

ダンナの具合は?と電話がかかってくる。
“He’s fine.”と答える。
ダンナに電話を渡す。
ちょっとしゃべると疲れるから、すぐに私に電話を戻す。
で、「本当に大丈夫なの?」と聞かれる。

たいした手術ではないとはいえ、ダンナはおととい腹を切ったのである。
まだ痛むのは当たり前だ。
全身麻酔をしたのだから、疲れて当然だ。
皆何を期待しとるんだ?
ひょいひょい歩き回ってるとでも思っているのだろうか?

手術後、切ったところが痛んだり疲れが酷かったりというのは当然だから“fine”と答えてどこがおかしい?

ところで、痛み止めを飲んだのは、当日1回限りだった。
食欲はある。
これをFineと言わずして、何をFineと言うのじゃ?

というわけで(というわけでもないのだが)、愚息は友人と一緒にSnowboardingに出かけた。
ベッドでおとなしく寝てるならともかく、すぐに起き出してきてはぶちぶち言う父親から逃げたのである。

「おい、ずるいぞ!私はどうなる?」と言うと
「母さんは好きで結婚したんでしょう。僕には選択肢はなかった。」
冷たいヤツ(母親似)ではあるが、理屈は通っている気もする。
(2002年02月17日の日記より)

私はダンナを病院へ連れて行った。
退院する時の説明によると、手術後24時間は1人にならないように、また運転しないように、1週間は家で休んでいるように、とのことであった。
が、何度説明しても、ダンナは1週間は動いてはいけない、運転もしてはいけない、と信じ込んでいる。
この思い込みは何なんだろうね?
病院に行ったら、案の定、歩き回らなければ回復が遅くなると言われていた・・・甘えるんじゃないよ!
(それならそれでおとなしく寝てれば良いのだが、ちょこちょこと起きてきて私の仕事の邪魔をする・・・愚息より手がかかるヤツだ。)

ま、運転したくないという気持ちはわかる。
が、何故私が診察室にまで入らなければならないのだ?
子供の付き添いじゃあるまいし。
しかも、私は英語が不自由なのだ。
ダンナは・・・当然英語には問題はない。
(っつうか英語しかしゃべれんじゃないか!)
私が一体何の役に立つというのだろう・・・全然役に立たなかった
隣でぼーっとしていただけである。

実は診察ではなかったのである。
透析を開始するために必要な書類にサインするだけだったのだ。
ダンナが書類を読んで、「読む?」と私に渡そうとした。
英文がぎっしりと書かれてある。
辞書無しでどうやって読むんじゃい!

先日、電話で英語が全く通じなくてすっかり英語恐怖症に陥っている私であった。
(2002年02月18日の日記より)

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7.透析をしていても普通の・・・

ダンナが透析ようのチューブを埋め込んで1週間がたった。
が、透析は一ヵ月しないと開始できないそうである。
これから一ヶ月間、透析のテストとトレーニングを行なう。
で、透析に関する色んなパンフレットや本をどっさりと渡された。
当然全部英語である。
1人では本を読めないダンナに付き合って、一緒に読んでみた。
ダンナの名誉のために・・・彼は英語が読めないのではない
本を広げると1ページも読まない内に眠ってしまうという特技があるのだ。
だから1人では本が読めない。

ふむふむ・・・

愚妻「ふ~ん、透析って色々あるんだ」
愚夫「え?そうなの?」
愚妻「そう書いてあるじゃない。」
愚夫「ふ~ん」
愚妻「ふ~ん、って一体何読んでんの?」
愚夫「あのね、あのね、透析やってても普通のセックスはできるって書いてあるよ。良かったね!」

嬉しそうな顔をして、一体どこを熱心に読んどるんじゃ!
しかし・・・普通じゃないのは出来ないということだな?
・・・困った・・・困るな!
(2002年02月23日の日記より)

短かったので・・・以下、おまけ。

ガーデンなんとかかんとかという名の(それじゃ全然わからないじゃないか!)蜘蛛の話をテレビでやっていた。
多分、それほど珍しい蜘蛛ではないのだろう。

蜘蛛の巣にかかった獲物をオスの蜘蛛が糸でがんじがらめにしてメスの元へ引きずっていく。
メスに与えるためである。
喜んだメスは夢中で獲物を食べる。
その間にオスはせっせと子作りに励むそうである。

「おお!これは君の親戚か?!」
と叫んだのは、テレビを見ていたダンナであった。

・・・そういうことは美味しいものを運んできてから言って欲しい。

彼は続けて、「今度、チーズケーキでも買ってこようかな?」と言った。

あのなぁ・・・私はチーズケーキくらい3分以内で食べ終わるぞ!
しかし、親近感を感じさせる蜘蛛ではある。
(2002年01月11日の日記より)

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8.ダンナの社会復帰

やっとダンナが仕事へ行った・・・やれやれ。
長~い10日間だった。

身体の具合が悪くて寝てるなら兎も角、寝ていたのは手術の日と次の日だけ。
あとはひょこひょこ起き出して、何をするでもなく家の中をウロウロしていた。

朝ご飯を作ってから愚息を学校へ送って行く。
帰ってきてしばらくするとダンナが起き出して朝ご飯を食べる。
で、すぐに「ねぇねぇ、お昼ご飯な~に?」
さっき食ったばかりだろうが!
で、お昼ご飯を作って食べさせてしばらくすると愚息を迎えに行く時間になる。
その後、夕食を作る・・・私の生活は一体何なんだ?

10日前までは仕事に行っていた。
仕事に行くとやはりとても疲れるらしい。
で、家に帰ってきたら夕食を食べてテレビの前でぐったりとしている、という状態だった。
見ていても気の毒である。
「静かに寝かせておいてあげよう。」という気持ちになる。
が、何もせず家でぼーっとしていると身体が休まる。
で、これまで以上に元気なのだ・・・こういう病人(?)が一番やっかいである。

台所にいても、洗濯物をたたんでいても、掃除をしていても、家計簿をつけていても・・・何をしていても邪魔をしにくるのである。
で、かまってあげないと拗ねる・・・最悪。
さすがに仕事中は完璧に無視してしまった。

愚息が学校を休んだ場合、一日中ベッドにいなくてはいけないことになっている。
テレビも漫画も本も音楽を聴くのも全部駄目。
学校に行けないくらい具合が悪いなら、ベッドでおとなしくしていなければならない。
起き出してきたら、宿題をやらせる。
(そういう決まりになっているので、愚息は多少の熱があっても学校へ行く。)

「仕事に行けないんだったら、1日ベッドでおとなしくしているべきだ!」
というのは、父にゲームルームのテレビを占領された愚息の愚痴である。
もちろん面と向っては言えない・・・父親には絶対服従なのである。

愚息と2人で密かにお祝いをした一日であった。
(2002年02月25日の日記より)

2006年2月、ダンナは腎臓と膵臓の移植手術を受け、健康を取り戻した。移植手術の様子については、いずれ書きたいと思っている・・・いずれ・・・死ぬまでには・・・書けると良いな。

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『DOTFATHERの能天気な日々』に続く